BEFORE SUNRISE 恋に落ちると言うこと

March 20, 2020

私がこの作品を見たのは、もう17年前ぐらいだ。オーストリア映画を探していた時、たまたま先入観なくレンタルショップで見つけたのがこの作品だった。簡単言うといわゆるboy meets girlストーリーだ。しかし、ひねくれた私が、それだけで心を動かされることはないので、もちろん少しクセのある構成でお話は進んでゆく。

 

作品自体は1995年の制作 今から(2020年)25年前の映画になる。古都ウィーンの街並みは変わらないし、俳優2人ともスタイルを持っているので特に古さも感じない。パリに行く列車の中で偶然出会ったアメリカ人の青年(ジェシー)とフランス人女性(セリーヌ)、意気投合してウイーンで途中下車をすることに、美しい世界遺産の街、ウィーンで 次の朝が明けるま いろいろなことを語り合いながらで観光楽しむのである。主な登場人物は2人だけ。イーサン・ホークとジュリーデルピー。2人ともとても美しい。美男美女の話なんて”けっ”と思いそうですが、会話の内容が普遍的で深い、若い2人が浅い体験ながら学び、感じ ある時は神秘的な話を、ある時は哲学的な話を、ある時は男女の謎を語りあっていく。決して説教句臭いわけではなく、その言葉が正しいかいなかではなく、あるいは男性が女性に諭す会話でもない。おそらく、とても対等な立場で、お互いの考えや思いや体験のやりとりを楽しんでいる2人に、私は理想的な関係を見て心地よく感じたのかもしれない。セリーヌが『Are you trying to say you want to kiss me ?』聞いて、少年の様にジェシーがうなずくシーンは、女性の立場なら母性本能をくすぐられる素敵なシーンだ。そんなふうに 男女の立ち位置が平等であることがこの作品のまず惹かれるポイントだった。

 

 もう一つは one night stand の誘惑だ。ウィーンの街に列車から飛び降りた瞬間から、2人にとってそこは 社会の外から飛び出したと同じ、2人だけの世界になった。お互いを知ることに集中して、もうそれだけで十分なのだ。瞬間瞬間を生きて、過去も未来もどうでもいいとなる、現実社会からしたらおかしな感覚。その fall in love ぶりが見事に描かれている。恋に落ちるとはまさにその通りで 悪い言い方をすれば事故に合うみたいな感じだ。予定してて事故に会う人はいませんから、予測してないとこから突然出会いが現れ そしてそれが神秘的に感じてより夢中になる。ルールや社会の枠から外れて永遠に見つめあっていられればと願うけれど、でもそれは続かないのだ。旅先の出会い、数時間後には別れなければならないと言う障害があるからこそ、関係はロマンチックに拍車をかける。

 

よくある不倫がその仕掛けと同じだ。法や言葉の枠から外ににぴょんと出て 感情と身体だけが2人の世界を作るのだ。家族のことを考えないのかー!と関係ないのに激怒する人たちがいるが、それは法や言葉だけの社会の中にいる人の見方で 言葉以外で繋がり合うことの幻想的体験は、社会のルールの外の営みなのだ。日常生活することと、その不倫関係が存在する次元が違うのだから理解できないのは当然で、厄介なことだ。と言っても決して正当化できる事ではないのだが、そこで言えることは、結婚をする人は、もうその強烈な脱社会的なマジカル体験に、縁を切ることを宣言して結婚するべきだと言うこと。またその体験を繰り返したいなら、結婚すべきではないだろう。結婚がその幻想関係をさらに盛り上がるための仕掛けになるなら尚更 その行為は中毒症状的さまを強くする可能性がある。それにしても、有限であるからこそ夢中になるのが恋愛の本質なのだろう。坂口安吾も書いている『恋愛は人生の花である』と。永遠に咲き続ける花はないのである。  

 

映画の2人の会話も熱した恋は覚めるもの、と状況を客観的に見ている。恋愛の儚さを知っているし『love』についてもよく判らない不確実なものだと覚めている。それでもその中でセリーヌが言ったセリフはとても印象的だった。『もし神様がいるとしたら あなたや私の中にではない 私とあなたの”わずかな間”(little space in between )にいるのだと思う、そして お互いの間に奇跡が起きるとしたら、相手を理解しようとすること、 分かち合おうとすること ”そうしようと試みること”こそ奇跡なの 理解しあえるなんてほとんど不可能なのはわかってるけど 気にしないわ 理解しようとする試みが大切なの。。』という言葉だ。2人はその短い時間の中で お互いを知ろうとしたこと そこに奇跡起きていたのかもしれないと実感していたのだろうか。若い心の理想とさめた現実を行ったり来たりしながら それでも 永遠を求めたティーンネイジャーの様な、安易な振る舞いによる失望を恐れて、『分別のある大人としてこれ切りにしましょう』と、大人ぶって理性で一旦は判断する。しかし。。別れの時 やはり理性を感情が制御できないというこに、、だって恋に落ちるってそういうこと!である。結局 半年後2人は同じ場所で会う約束をする。はたされるかは約束できない約束だ。またはその幻想は本物になりえるのか。2人の賭であったのかもしれない。さて 半年後 再会はいかに。。 

 

 

実は 『before sunset』『before midnight』という続編がある。そちらも面白いが、違う要素が盛り沢山なので また機会があれば書こうかと思う。いずれにしても 『before sunrise』が3部作中ベストと言える。別れた後にのそれぞれの横顔に複雑な心の模様が見えるところや 会うのか、会わないんか どっち!どっち! 自分だったらどうだろう なんて考えて余韻にひたれるからね。その切なさが理想主義的恋愛の醍醐味だから。 

 

1995年 ベルリン映画祭 銀熊賞受賞 監督リチャード リンクレイター

 

 

 

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