BACKSWAN / a Pianist  母の愛が娘の狂気に変わる時

March 13, 2020

 

まず 『ブラックスワン』この映画は、公開当時、映画館にわざわざ見に行った作品だ。けれど、、体調が今一歩だった上に、主人公を追うように撮られているために画面が揺れる。しかも大きなスクリーンで揺れ、酔いやすい私は、気持ち悪さに耐えきれず、ストーリー半ばくらいで劇場を飛び出した。切迫感のあるおどろしいその画面と気持ち悪さの記憶がトラウマになって、この作品がDVDになっても見るのを避けていたが、しばらくして、いいレビューを目にすると、小さい画面なら大丈夫かもと再度挑戦、、 一転して、その刺激的な表現とナタリーポートマンの美しさと、素晴らしい演技に魅了され、DVDまで買って、もう何十回と見ている。

 

さて 作品のジャンルとしたらこれは ホラー映画のジャンルでしょうか?私にとっては青春映画という感想だ。自己肯定感の低い主人公と言っても、もう23才くらいの若い女性が、母親の呪縛からとうとう解放されるといという物語。もちろんもっといろんな要素が絡んではいるが、彼女の成長物語だったと捉えている。自己肯定感の低いことで自傷行為をするというのは、しばしば聞くことだ、私自身も仕事の関係でそういう人が身近にいたこともある。多くは母親との関係によることが原因などと、聞きかじったことがあるが、それは専門ではないので詳しくは控えるけれど、映画で描かれている 母娘の関係もまさに母の過干渉、守っているつもりで娘の自信を奪い取っているシーンが多く見らる。相互依存からくる歪んだ関係は自傷行為を導くのではないかと思わずにはいられない。 

母親の心理はこうだ、「あなたを愛してるわ、そしてプリマとして成功して欲しい 私も犠牲になているのよ頑張って!』しかし一方で「あなたはまだ子供、そして頼りなてプリマなんてプレッシャーね!そのストレスで自分を傷つけるのよ。かわいそうに私が守ってあげるわ、あなたは私がまだまだいないと生きていけないわ。』恐ろしい。。でも主人公は最終的にその母親の呪いを解く。解放され美しいスワンになるのだが。。その呪いを解くための戦いは痛々しく凄まじいものでした。

 

画面は痛々しく、衝撃的なシーンが多くあるのですが、色味をできるだけ抑えシンプルに構成されているのでシャープに出来上がっています。モノトーンの印象に抑えられており、少しフランスっさを感じると同時に 舞台になったニューヨークの匂いもしっかりする都会のドラマ。何よりもナタリーポートマンが美しく見えるメイクや衣装もこの映画を引き立ている。

2011年 第38回アカデミー賞 ナタリーポートマン主演女優賞 監督 ダーレン アロノフスキー

 

もう一つは『ピアニスト』という映画。これも母娘の呪縛もの。ブラックスワンを見た時、思い出した映画だ。内容はやはり厳しい母に縛られて生きる、今度は39才女性の話。主人公はピアノの教師だ、愛想のない堅物の地味な女性である。やはりブラックスワンの主人公と同じで自傷行為をする。バスルームや狭いアパートメントで母娘で暮らす、息苦しい感じなどかなり共通する設定だ。

監督はいつも難解な映画を制作するミヒャエル ハネケ。ハネケの作品はほとんど見ているが難解さはもちろん、独特の間合いと冷徹な空気感が魅力的に感じる。どうしてあんな突き放したような作品ができるのか。困難な状態をなんの言い訳もなく提示し 画面やセリフから表層的な要素だけを淡々と突きつけ、それでいて 画面に映し出されていない部分に、人間と世界の本質をえぐりだす手法が恐ろしいのだ。だから 鑑賞した人の心に見終わってからもこびりつく、時間をかけて読み解未解けない人には鑑賞に堪えない映画だろう。

 

で、物語だが、そのピアノ教師エリカはある若く美しい青年に好意を持たる、最初は避けていたけれど熱心なアプローチで、青年の気持ちを試しながら受け入れることに、でもその受け入れ方が変態的であった。堅物の女性教師は普通の恋愛の仕方を知らない。その青年はその彼女の愛するおかしな方法に戸惑い、そして拒否をする、失恋だ、彼女にとって初めての失恋だったのか、、人は恋愛をすると自分の知らない自分と出会うもので、どうにも収集がつかない思いをするものだ。でもそれを超えて一つ成長する。しかしその主人公は感情と向き合う方法は子供のままだった。母からの呪縛を30代になってもいまだ解くことができずにきたのだろう。ピアノ教師としては素晴らしくても、自分の収集のつかない感情と向き合い、表す事はしてこなかったのだ。ブラックスワンのリナとは違いその呪縛から解放されることはない、彼に否定されたことで わずかな自己肯定感は絶望に変わり、最後はやはり自分を傷つけることでしか表す術を知らなかった悲しい物語だ。ここで私が疑問に思うのは エリカにとってのピアノである、ピアノは彼女を救う事はできなかったのか そうだとしたら彼女はやはり母親のためにしかピアノの教師をやっていただけとなるそれも悲劇だ。 

 

     

この映画はうっかり見るには衝撃的だ。私は気楽な恋愛映画だと思って見たら、、ぐっさり心にの残った作品となった。自分にも見に覚えがある物語だったかからだろうか。確認のためか 怖いもの見たさか 時々見たくなる作品でもある。

 

 

 

 

 

 

2001年 カンヌ映画祭グランプリ受賞 最優秀主演女優賞 イザベル ユペール 監督ミヒャエル ハネケ 

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